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ふ​な​む​し - フ​ル​オ​ー​ト​ム​ー​ン​外​典

from 「​遺​」 by 全自動ムー大陸トリビュート

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lyrics

フルオートムーン外典

Song:マリネ
CV:暁鞠子/ぶらっくわーくす音声素材集


葦原は四裔を昏黒に舐め取られた
丸い鉢のなかの腐った乳(ち)のように月はある



雉子の骸(おもむろ)に腰まで埋んだ
積尸気(ししき)の
歯式のC
史記も司式もない滑(なめ)る四季を口淫するフィヨルドのここに
だれがなにを谺(かえ)しにくるというの

遠忌から遠くにいて
いとけない凶音を夢寐に幽閉じ込める
きつくきつく瞑った葦原の
まだ舐め取られない
白幕はわたしの羞明
冷たい畳の上で
棚雲と切り口を突き付けあう砂浜に似てくる膝も
顫えている
はだかをみられるのがかなしい?
…………
白蝶貝の釦にふれる指が泥ましい泥ましい 
焦れている馬蝿が
懐剣からまた飛び去る

墨が滴る蜘蛛の囲
トーク帽に残る褪せた髪
斎庭には降りない鳥が上空でする姦踊(かしまどり)



嘔けない
喀けない
潰滅して泡立っているとしても
ひとつ残らず叶わないとしても
口腔内に守っているそれがたまごだと思うから
きっとずっと言わない

死火山から雪を持ち帰るてのひらは永遠じゃなくて毀(こわ)れる
加敝流弖(かえるで)が揺れていた
でも
思い出がずっと残ればいいと思う

夏に
流氷砕氷船はどこにあるの
わたしの胡頽子の木が折れていた朝
水をやたらに飲んだ胸の
北端にあって赤ちゃんができなくする手術を受けた
すいぞくかんに
いたくらげ同士交わしたんだね

淡淡(あわあわ)と立ち昇る滑走路に繊弱(ひわず)な鞭毛を打ちつける
水着が溶けおわるまでのわたしラムネ廟の喘ぐ泡影
介抱するように覗き込む円らな葡萄棚が虹彩にいくつも墜ちるのに
押されている乳母車が青い葡萄でいっぱいにならない
木洩れ日になって砕け散る前の
あのガラス玉にちゃんとふれたい
ふれたい
流氷砕氷船が来る
わたしを押し潰す

 ○
o
 。




そんな
嵐の痕にタオルを引き寄せてもだめ
最後の釦がおわったら
いたいけなそのかたちが
崩れてしまうよ
ほら

十字に裂けて吸血する乳房を持つ血天井に
はじめて接唇しそうになるとき
綿花畑と通じ合えるとして
思うことで綿花畑を厚くしてもきっと
ラムネ玉を取り巻いて滑(なめ)る季 季 季 季
すみれのトーチカはかんじてしまう

脳髄(なずき)に堕とされた夏蚕の白い
指文字がはじける
葩暗む名付けの幽壙(あなぐら)で索(あなぐ)るアナグラム
青磁のように沈痛なミルクの面に鴉の羽根をうかべる
黙拝を
抜毛に血を滲ませて

絶滅



倒れた三方
畳二帖白絹敷物白屏風を熾きて匂う花影ごとクッと瞑る
わたしがなっている血の網かけた護謨の水まくら

御正体の御着背長に縋りつき
その面頬の強(こわ)い髭にぐしゃぐしゃの顔を埋める
革の匂い
護謨の匂い
曇る蒔絵の硯箱の匂い
生簀の匂い
濡れた朽葉の匂い
北端にも来る夏の匂い
花がゆれている岬
そこにある仮設トイレの匂い
雨曝しのトタンの匂い
密かに菌糸が結ばれる木道の匂い
馬糞の匂い
ああ
落魄れた浮薄な紅が黄色い髭を汚して……
依依麻久良さま
わたし
わたしね
好きな人ができたんだよ

遠くに黄色い土蔵が赤く窓を明いている





歌う手鎖の子たちに
ゆくえがあるってどうして
思わなかったの
夕さる防風林
るるる
病んだ五齢蚕の遺薫を髫髪に嗄らして
黄色(おうじき)の忌籠
射す影の紗を咬む窓のなか
列らく小旗を見ていた間中

ねえ 苺苺苺刀自
黙示録はもういいの?
あなたの考える黙示録がわたしすきだったよ
死随念からさめてまた
ハスカップの小枝で地図を指して言ってよ
わたしたちの六角あづさヰ領で起きている
すべては大丈夫なんだって
そして寝る前に読んで聞かせてください
湮滅された外典(とつふみ)の偈頌をいちから

とかげに厭きた手で雪洞を囲んで
陰房(へや)いっぱい手の影にして
手の影のなかで思うこと
紋章官がやってきて
わたしキスされました
わたしがここにいるのを立派だとほめてくれました

よだれをふいてあげます苺苺苺刀自
ずっとここにいられないのでしょうね
まだやわらかいあだしのに風が立って
窶れた銀鈴がこぼれるとき
るるる
うわずる新墓に痩せた胸をあてて
黄色い土蔵の窓に消えかかって

credits

from 「​遺​」, released August 22, 2014

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